比島民譚集 フィリピンの島々に伝わる話 /火野葦平 川上澄生

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≪商品情報≫

著者名:火野葦平、川上澄生
出版社名:国書刊行会
発行年月:2024年01月
判型:四六判
ISBN:9784336074775


≪内容情報≫

可笑しくて悲しく、少し残酷。
戦争作家、火野葦平がフィリピン従軍中、「比島の民情を知るため」仕事の合間を縫って民話を採集し翻訳した、近いけれど遠い島々に伝わる奇妙な話。1945年に刊行されたものを復刊。

昔むかしのこと、まだ神々が人間と交わることを好んでいた時代に、一人の若い神がマジャの山に降りて来た。若い神はこれまで見たことのなかったほどの美しい者を見た。(きっと彼女は高貴の生まれにちがいない。)彼女の父は誰に娘をやったものか定めかねた。求婚者たちのうち誰がもっとも優秀であるかがためされることになった。(アモル・セコ草)

山々のかなたの人里はなれた村に、アボ・サコとよばれるひとりの老人が住んでいた。彼はいつも子供のように陽気で、子供たちと遊ぶのを好んだ。……村の年寄りたちは子供たちに彼と遊ぶことを禁じた。……「あなたはここでなにをしているのです」と仙女はたずねた。「私はここでしずかに死にたいと思って来たのです」(「アボ・サコ老人」)

若者たちがビリアンを嫁にほしいといって来たが、母親はいつも貧乏人よりも金持の方を好んだ。母親は、いつも「そんな男のところに嫁にゆくくらいなら悪魔を亭主にもった方がましだ」と答えていた。ある日、ビリアンが友だちにそう話していることを、悪魔がきいた。(「悪魔と風来坊」)

いっぴきの猿と、いっぴきの亀が川の土手に腰かけていた。一本のバナナの茎が流れて来た。「あのバナナの茎をひろって植えるのはよいことだと思わんかね」と猿がいった。「君は泳げるかね」と亀がきいた。「僕は泳げん」と猿はいった。「では、僕がバナナの木をとつて来よう。木は二人で山わけだ。」(「亀と猿」)
挿画は萩原朔太郎『猫町』の表紙画で知られる川上澄生。

【目次】
解題(火野葦平)

動物裁判
大力ルーカス
ユアン・プソン・タンビ・タンビと猿
アモル・セコ草
島と竹
小島の出来ごと
悪魔と風来坊
三人兄弟
サラゴサ物語
マラカスとマガンダ
亀と猿
アボ・サコ老人
猿と亀
指の話
七人の馬鹿
どうしてジュアンは金持になったか
王様タシオ
アナニトマスの冒険
田植え
三人の佝僂(せむし)
盲目ジュアン
カランカルの話
パルマリン王物語

附録
「兄貴のような人」より抜粋 火野葦平
「比島の文化」より抜粋 火野葦平
「スペイン、メキシコ、フィリピン」井上幸孝 専修大学 国際コミュニケーション学部 教授
「フィリピンの猿民話概説」辻貴志 アジア太平洋無形文化遺産研究センター アソシエイトフェロー

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