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1932年の大日本帝国 あるフランス人記者の記録 /アンドレ・ヴィオリス 大橋尚泰

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≪商品情報≫

著者名:アンドレ・ヴィオリス、大橋尚泰
出版社名:草思社
発行年月:2020年10月
判型:四六判
ISBN:9784794224774


≪内容情報≫

日本はどこへ向かっていたのか?
満洲事変の翌年、日本を取材するために来日した『ル・プチ・パリジヤン』紙の特派員
アンドレ・ヴィオリスは、当時、若手将校から崇拝の的になっていた荒木貞夫(陸相)のほか、
平沼騏一郎、安部磯雄らとも対面し、そのやりとりを含む日本人の肉声を記録した
ルポ(Le Japon et son empire, Grasset, Paris)を1933年に刊行した。
本書はその全訳に詳細な注を付した一冊である。
五・一五事件による政党政治の終焉を目の当たりにしたフランス人は、岐路に立つ日本社会を
どのように捉えたのか。風雲急を告げる時代の空気を今日に伝える貴重な記録である。


(本書より)
日本の新聞で展開されつづけている国際連盟への反対キャンペーンに話をむけてみる。
ジュネーヴの日本代表団の召還は、ありうることだとお考えなのだろうか。
一瞬、荒木将軍の微笑が消えた。ついで、ゆっくりとした口調で、
「日本が国際平和の維持を目的とする組織から去るというのは、重大な問題でありまして、
我々はまだその可能性を想定してはおりません。しかしながら(中略)もし、現状に即して
問題を解決すべきでありながら、得意になって単に感情的、感傷的な議論に終始するとしたら、
国際連盟は信用を失い、破滅へと追いやられる他はないでありましょう……。」



一九三二年〔昭和七年〕八月八日、〔米国国務長官〕スティムソン氏は、重要な演説のなかで
ケロッグ= ブリアン条約を引きあいにだし、アメリカは〔満洲〕侵攻によって得られた結果を
認めることを拒否し、平和のために介入する可能性も排除しないと宣言した。
どのような介入なのだろう。あれほど経済的に大きな傷を負ったアメリカが、これほど
離れた国とこれほど重大な戦争をする可能性を考慮にいれることができたのだろうか。
他方、日本に数週間滞在しただけでわかることだが、外交官や指導者は別としても、
少なくとも日本の一般世論にとっては、アメリカとの衝突という考えは不快なものではない。(中略)
私自身、日本人がいらだたしい憎しみに震える声でこう話すのを、何度耳にしたことだろう。
「ああ、せめて一九三六年〔昭和十一年〕以前に米国と戦争ができたらなあ。
そうしたら、きっと勝つことができるのに。」

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