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ヘスペルス あるいは四十五の犬の郵便日 新装版/ジャン・パウル/恒吉法海

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ジャン・パウル恒吉法海
九州大学出版会
ISBN:4798502650/9784798502656
発売日:2019年09月



※商品画像はイメージや仮デザインが含まれている場合があります。帯の有無など実際と異なる場合があります。

【内容紹介】
『ヘスペルス』(1795年)はドイツの小説家ジャン・パウルの出世作である。「ヘスペルス」とは「慰謝」の「宵の明星」の意であるが、ジャン・パウルの筆名をドイツ人だからと言って、本名の「ヨーハン・パウル」に変えられないように、「希望」の「明けの明星」、「美」の「金星」も暗示していて、「ヘスペルス」と訳すしかない。

本作は最もジャン・パウルらしさの見られる語り手の奔放な脱線と物語の感傷性の併存する奇妙な混淆物である。

物語は『見えないロッジ』や『巨人』がそうであるように、フランス革命の影響を受けたドイツの青年達の愛と友情を軸に展開する。前景にあるのは主人公達の愛と友情であるが、背景には政治家の父親が控えている。中景にあるのは、風奏琴やフルートの音楽であり、絵画としては「聖セバスティアンの殉教」(三島由紀夫推奨)が印象的である。子供交換や?人形による哲学的自我の問題や教育問題も絡んでいる。革命はドイツの小国では不可能で、結局は上からの改革という妥協に終わる。

主人公ヴィクトルは全作品中最も現実のジャン・パウル本人に近いとされる。ヒロインは主人公を「イギリス人とフランス人の二つの部分から組み合わされているように見える」(189頁)と述べている。つまりスウィフトやスターン、それにルソーの組み合わせであろう。

革命と反革命のせめぎ合いの一例を現在に引き寄せて紹介すると、内部告発の問題が考えられよう。例えば、内部告発者は、本作の敵役マチューのように、これはわざとであるが、「世界が破滅しようと、正義のなされんことを」(475頁)と主張するかもしれない。しかし組織擁護論者は、「宮廷では体裁のいい嘘は許されるばかりでなく、要求される」(596頁)として押さえ込みにかかるであろう。特に日本のように同調圧力の高い所では、内部告発の処理は難しい問題である。角界、政界、財界、官界、学界で見聞する諸現象は、『ヘスペルス』で議論されているテーマが古びていないことを物語っている。

ちなみに三島由紀夫はジャン・パウルを知っていて、清岡卓行の芥川賞受賞の選評に「愛すべき作品であり、詩と思索と旅情と風景の織りまぜられたジャン・パウル風の散文である」(1970年)と述べている。

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